その十六 徹夜
-
娘
-
お父ちゃん昨日も帰って来やはれへんかったなぁ。一週間ずっと徹夜してはるけど、大丈夫かなぁ。毎日一緒に遊んで欲しい。帰って来て欲しい。
-
祖母
-
あんたのお父ちゃんは、半導体業界の発展のために命をかけて働いてはんねやで。お父ちゃんが働いてはるおかげで御飯食べさしてもろてるんやで。感謝せなあかん。
-
娘
-
ほんまに一所懸命働いてはるんか?うち、見たことないもん。たまに帰ってきやはると、いつもお酒臭いし。ほんまに仕事で徹夜してはるんか?
-
祖母
-
仕事、仕事、仕事。あの人から半導体設計の完全自動化という仕事を取ったら、何も残らへん。お酒飲まはるのは設計標準化委員としての重要な仕事。あんたのお母ちゃんには逃げられてしもたけど、誇りを持って仕事してはる。あんたが我慢せな、お父ちゃん可哀想や。
-
娘
-
分かった。我慢する。お父ちゃんの携帯にかかってきた変な女の人からの電話とか、ポケットに入ってた変な名刺とか全部忘れて我慢する。
-
祖母
-
そや、お父ちゃんにお手紙書き。お婆ちゃんが渡しといたるさかい。あんたから手紙もろたら喜ばはるで。
-
娘
-
こんなんでええか。 『観念して帰宅しなさい。お母さんが泣いているぞ。』
-
祖母
-
あほか。お父ちゃんは誘拐犯か。お父ちゃんは半導体の設計してはるんやで。そこの所を、よう考えや。真剣に。
-
娘
-
分かった真剣に考える。いつまでも元気で働いて欲しいし、お父ちゃんが家に帰れるように、会社に貼ってもらう標語を真剣に考えた。
『落とせクロック、落とすな命。』