その十七 幽霊


社長
おまはんの耳にも入ってると思うけど、うちの三番倉庫な。晩になると幽霊が出るちゅう噂があるそうやないか。電源も入ってないのにモニターに幽霊が映るていう噂。今晩あたり正体を突き止めに行ってもらいたいんやが、おまはん頼まれてくれるか。
部長
あのぅ。いやぁ。困った。三番倉庫だけは堪忍しとくなはれ。三番倉庫いうたら、鬼門でんがな。方角が悪い。どうしてもていうことでしたら、お暇を頂戴して、親元に帰らしてもらいます。
社長
無責任な。おまはんの責任やで。あんたが開発した商品やないか。世界最大最堅牢、象が踏んでも壊れない携帯端末用の『白黒モニター』が絶対売れるいうて無理して開発したのは、あんたやで。結局みな売れ残ったけど、倉庫一杯に。どないしてくれるんや。
部長
せやかて、社長も結構乗り気ではんこ押さはったやおまへんか。3年もかかって苦労して、苦労して、やっと完成したのに。予算出してもらわれへんよって、設計者に無理さして無理さして。皆、家庭を省みず、胃潰瘍になり、脱毛症になり、ノイローゼになり。象に踏まれて死んだやつまでおりまんねんで。わたいが一番恨まれてますねん。怖うて行けまっかいな。三番倉庫だけは。自分で行きなはれぇぇぇぇ。
社長
あほ、泣かいでもええがな。わしが行けるんやったら、おまはんに頼まん。怖いがな、わしかて。そや、警察に頼もか。警察に。三番倉庫に泥棒が入ったことにして。モニターだけに、犯人はすぐ走査線上に浮かび上がります。とか何とか言うて。
部長
そんな強引な。そら、あきまへん。警察いうても町内には駐在の源さんしかいてまへんがな。源さん、そら怖がりでっせ。わたいら以上に。せやけど、源さん言うとったなぁ。カードローン地獄で自己破産もできん言うて。祝儀出したったら頼まれてくれよるかもしれまへんな。総務の使途不明金余ってまっしゃろ。総会屋に渡すはずやった金。
社長
あかん。あかん。白黒モニターだけに、色は付けられん。