移動体通信

孫      じーじー、おこづかい頂戴っていうかぁ。

祖父    南無阿弥陀仏。何妙法蓮華経。アーメン、ラーメン、冷そうめん。
        誰が『じーじー』やねん。大旦那はんとかご隠居はんとか長老とか、もうちょっと
        まともな呼び方できまへんのか。
 
孫      うっそぅ。だってぇ、『じーじー』の方がチョーかわいいっていうかぁ。
        チョーおちゃめっていうかぁ。おこづかい頂戴っていうかぁ。
 
祖父    まあ、何でもよろしい。おこづかいあげるさかいに。
        そやけど、こんな年寄りから金巻き上げて、何するつもりや。
 
孫      やっだぁ。ていうかぁ、やっぱぁ、携帯じゃないとぉ。

祖父    そらあかん。それだけは止めとき。わしは大日本帝国の為にジャングルを歩き、
        マラリヤに苦しみ、戦友の屍を踏み越えて。命からがら。天皇陛下万歳!

孫      それは、兵隊。。。やっぱぁ、携帯じゃないとぉ。

祖父    なに言うてますねん。いつも携帯で長電話してるやないかい。

孫      うっそぅ。これは、ピッチだしぃ。チョーださいっていうかぁ。

祖父    そら、我慢せなあかん。わしは八つの年から出征するまで、船場の呉服屋で。
        田舎もんやと番頭はんにいじめられて。つらかった。親元に帰りたかった。
        おかあはんに会いたかった。

孫      それは、丁稚。。。ていうかぁ、テレクラも一年で飽きたしぃ。
        チョーむかつくスケベおやじばっかだしぃ。

祖父    贅沢言うたら、あかんで。一年も行かしてもろたら、ありがたいと思い
        なはれ。わしは奉公に出される前、おかあはんに無理言うて形見の帯と
        カンザシを質に入れてもろうて。半年だけ行かしてもろた。うれしかった。
        読み書きそろばん。。。

孫      やっだぁ。それは、寺子屋。